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WORDS

A delusion sentence.

Get it: 言の葉(8059):廻環/裕さまから


同じ空気を吸って、同じ大地に立って。
自分の傍に彼がいて、背中を預けてきて。


- 言の葉 -


間の抜けたチャイムの音が校舎に響く。
珍しく、顔を赤くして「京子ちゃんと今日一緒に帰るんだ」と言った綱吉は既に教室から姿を消していた。
守るべきボスだから一緒に帰りたかったが、彼の幸せを考えると我慢する事を選んで。獄寺が教室から綱吉を送り出したのは
つい先程の事だった。

鳴らない携帯をいじりつつ、獄寺は移り変わる画面を見つめる。
帰れば良いのだが、帰りたいという気分もあまり浮かばず、携帯電話を只、触る。

「あれ?獄寺、まだいたんだ」
そんな時、ふと、頭上からそう声がかけられて。野球帽を被った山本である。練習が終ったのか、少し泥のついた鞄を肩にかけ、教室を覗きこむ。
返事をするのも面倒で、眉間に皺を寄せつつ決して視線をあげなかった。すると、がたんという音と共に、彼が目の前の席に腰を降ろしてきて。
「ソレ、何時もいじってるけど、楽しそうなのな」
そう言って、笑う。
その笑顔が更に癇に障り、獄寺は「別に」と言うと携帯を閉じた。
そして自分の鞄を掴む。
「俺も帰るわ」
一人でいたかったのに。
特に誘っていないのに、勝手に山本はそう言うと後ろを着いてきて。
「着いてくんなよ」
睨み付けるが、相変らずの笑みを浮かべて。
「どうせ帰る方向、一緒だろ?」
山本はそう言うと、獄寺の前を歩く。
何か言い返そうと思うが、言葉が思い浮かばず。
悔しくて、獄寺は口を閉じると無言で山本を抜かすと前をズカズカと歩いていった。

お互いが無言で。
近くの公園を横切った時、ふと、後ろから山本が声をかける声が聞こえる。
無視を決め込むが、獄寺を呼ぶ声は止まず。
「なぁ」
「うるせぇな!一体何だ?」
ついに我慢の限界に達し、後ろを振り返ると楽しそうな山本がいて。
山本はなぁ、と繰り返すと言った。

「俺、やっぱり獄寺の背中好きだわ」

惜しげも無く。
恥かしげも無く。
それは、伝えるという言葉では無く、只再確認している言葉で。
「んなっ…」
殴ろうか、ダイナマイトを投げつけてやろうか、頭の中で色々と考えるが、頭の処理速度が現実に追いつかず。
「じゃな、今日、俺用事あるから」
無意識に殴りかかっていた獄寺の右腕を避け、山本はスマンなと言い残すとさっさと姿を消した。
行き場を無くした拳と、獄寺を残して。


「…俺は、てめぇの背中なんか嫌いだ」

2008/07/14 やっと持ち帰りしてきました。山獄書きじゃないのにありがとう!笑。