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WORDS

A delusion sentence.

カンタレラ(土方vs斎藤)


雪崩れ込んだ茂みの中、大木へと背を押し付けられた身体はそれを認識する前に強く抱きすくめられた。すぐさまに口唇に噛み付かれて、息が詰まる。
「…っ!」
荒々しい程のそれに、知らず身体が震えた。解放されない―解放される気も無い接吻けに負けじと目の前の男の背に腕を回し引き寄せる。そうして薄く開いて窺い見たその男の紫電の瞳は愉悦に細められて、何とも美しかった。
「ん…」
立ったまま膝を割られ、入り込む足がより身体を近付ける。未だに慣れない短く切り揃えた髪を掻き乱されて、鼻から甘たるい声が零れた。絡め合う舌先に、思わず喉が鳴る。
「…斎藤」
微かに出来た隙間からそう呼ばれて、目だけでとろりと微笑み返す。男の背に回した手で、皺になる位に上着を掴んで言葉無く強請ったそれに、男はすぐさま応えた。こんな姿を誰かに見られるかもしれない。そうは思っても、最早止められるものではない。灼熱が身体の中で出口を求めて暴れまわる感覚。接吻けだけではどうにもなら無い程に熱くなった身体に、互いは気付いていた。一度触れてしまえば、戻れない事などとっくに気付いていた筈なのだ。淫猥な音を立てて貪りあうその姿は、いっその事闇に紛れて溶けてしまえばいいと願ってしまう。
「副、長……あ!」
知らず声が擦れ、それが周りを漂う空気を一層色濃くした。程好く均整が取れた身体が重なり、際どい箇所を腿で刺激され、斎藤は表情を崩さずにはいられなかった。溶けて潤んだ藍色の瞳は、男―副長・土方歳三の剥き出しになった野蛮な瞳とかち合い惹かれ合い、溺れる。視線も逸らさず服を乱す事もないまま、呼吸だけを荒げてただ夢中で熱をぶつけ合い貪るそれは、酷く甘い毒薬の様だと、斎藤は思った。

2010/02/08 皆川(ちっす+乱れの無い洋装がテーマでした。しかし毒薬関係ないね!笑)
2010年バレンタインフリーテキストですのでこちらの話は持ち帰りOKです。(02/14まで)
良識の範囲内で煮るなり焼くなり好きに扱って下さいませ〜。