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WORDS

A delusion sentence.

youthful days(→59→)


いつかこんな日が来るんじゃないかって、思ってた。思ってただけじゃなくて、自分は知っていた。いつか、なんて漠然としているものではなく、もっとはっきりと。ただ、考えなかった。考えたくなかっただけだったんだ。

「……」
誰も彼も黙りこくってしまって、場の空気が重い。しかし、この状況を打破出来る程、自分は道化になりきれない。そんな余裕もなかった。心なしか俯く自分と、向かい合わせの人達。これが戦いだったら完全に多勢に無勢。
「あ、の…さ」
「…ハイ」
「げ、元気で…ね」
震える声でそう告げた主の顔を見る。その優しい眼差しに思わず出そうになったいつもの呼び名を、喉の奥に押し込めた。彼はもう『10代目』では、ないのだから。
「さ…沢田さん…」
「…」
彼―沢田さんは『ボンゴレ10代目』の座にはつかない、と言った。ボンゴレファミリーにも入らない、と言った。そちらの世界とは関わらない、とそう言った。ボンゴレ本部でもそれを承諾し、正式に『沢田綱吉』はボンゴレファミリーとは無関係の人間となった。それに伴い、ボンゴレリングは回収されて、守護者も白紙に戻された。まるで―何も無かったかの様に。
「…あそびに、きてね…?」
「…」
その言葉に対するいい言葉が見つからなくて、口唇を噛む。もしも―もしもでは無く―此処から自分が去れば最後、もう此処に訪れる事は恐らく無いだろう。彼に会うなんてもっての他だ。自分は、彼が関わらないと言った”そちらの世界”の人間なのだから。

―でも。

「…10代目もお元気で。」
顔を上げて、目に溜まった涙を零さない様に歯を食い縛って。酷く揺らめく視界で彼の、みんなの姿を焼き付けた。背を向ければもう見ることすら出来ないだろう、仲間の姿を。何も無かった事になんかなる訳がない。楽しかった事も辛かった事も苦しかった事も何気ない日常も、みんな一緒に過ごした仲間だ。初めて出来た、大事な仲間なのだ。
「絶対に、忘れません」
住む世界が違ってしまうけれど、会えなくなってしまうけれど。みんなを仲間と思う事くらい赦されるだろうから。もう自分は独りじゃないって思えるから。離れてても繋がってる、と思えるから。

(ありがとう、みんな)

煌くそれを大事にして、生きていくから。


2008/11/11 皆川(色々と有り得ないですけど、雰囲気で宜しくお願いします)