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WORDS

A delusion sentence.

**pieces [ ulysses ] - 「Il sole quieto」(8059+3359)


さらさら、と中庭の木々が爽やかな音を立てる。綺麗に刈り揃えられた芝生の上、眩しい日の光を受けたベンチにボンゴレ・晴れの守護者は座っていた。何をする訳でもない。ただそこで目を閉じ、過ごす時間。日除けが無いその場所は滅多に人が来る事は無く、了平の特等席みたいなものだった。
だからそこに突如現れ、音も立てず何も言わずに隣へと遠慮も無く腰掛けてきた人物に、了平は特別驚きはしなかった。閉じていた目も開く事はしなかった。これも、比較的よくある事だったからだ。

「……」
「…また、か」
「うるせーよ…」

了平とは異なりだらしなく長い四肢を投げ出して座る人物―ボンゴレ・嵐の守護者の獄寺はベンチの背凭れに頭を乗せると眉をしかめ、小さく呟いた。その目蓋は了平と同じく閉ざされている。
「いい加減にしたらどうなんだ。お前達は」
「…」
「もうそんな子供でもあるまい?」
そこで了平は目を開けると、隣に座る獄寺を見やる。ベンチの背凭れに頭を乗せて上を向いているが故に晒された尖った顎とそこから伸びる細い首に、昔から骨格だけではなく色々と尖っていたなと思う。体格・性格・態度。どれも敢えて敵を作る様な、そんな人物だった。それは今やただ不器用なだけなのだとわかったけれど。
「…いいんだ」
「何?」
「俺達は今までもそうしてきたんだ。だから、これはこれからも変わらねーよ」
変えたくないんだ、と声にならない言葉が聞こえた気がして、了平は何も言わずに真っ直ぐ向き直った。目の前に広がるは美しい、色。
「だから、こうすんのもこれからも変わらねーよ。お前がここにいる限り」
その言葉にゆるり、と振り向くと、自分を射抜く”翡翠”と称賛されるアッシュグリーンの瞳。それは眩しさに少し細められてはいたが、太陽の光を受けて煌いていた。いつもと変わらないその輝きに、了平は小さく溜息をつくと、呆れた様に口角を上げる。
「…そんなガラではないのだがな」
「全くだ。腹立つぜ」
「…山本をここに呼んでもいいのだぞ…?」
「…」
バツが悪そうに黙った獄寺を横目に、了平は空を仰ぎ見た。変わらず降り注ぐは眩い太陽の光。彼―獄寺が何を望んでこうしているのかは考えるだけ無駄な事で、詮索する必要のない事だった。ただ、感じ取れるその空気が了平をその場に留めている。自分がここにいて、彼が満足する。それだけでここにいる理由は充分なのだ。

「…やっぱ、太陽ってすげーな…」
しばらくして、獄寺が小さく呟いたその言葉は、どちらを指したものか定かではなかったけれど、了平は音も無く笑うのだった。

2009/02/03 皆川(加筆修正済/まだまだこれから)