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WORDS

A delusion sentence.

**pieces [ ulysses ] - 「The emperor of the outfielder」(8059+3359←27)


いつだって、自分は蚊帳の外だった。


勉強は確かに出来ないけれど、周りの変化に気付かない程、鈍くも愚かでもない。
それは小さく些細な事でも、大事な友達の事だったのなら尚更に気付く。
自分の童顔に拍車をかけるこの大きな目が取り込む情報は、意外と多いのだ。
そこまでを思って、綱吉は机の上で組んでいた手を組み直した。
視線は真っ直ぐに前へ。そこには仕立ての良いブラックのスーツを着こなす自慢の右腕。
形の良い口唇から零れる声が紡ぐのは、似合わない程に物騒な内容だったけれども
それでも、綱吉はそれを愛おしげに眺めた。目を細めて、まるで子を思う親の様に。

「…何かおかしい点がありましたか、10代目?」

綱吉の視線を訝しげに思い、右腕―獄寺は問いかけた。
その溶けた視線が、獄寺を照れ臭い様なむず痒い様な気持ちにさせたからだ。
敵対するファミリーを壊滅させた時の事を報告しているだけの人間に、不釣合いだったのだ。
「…何でもないよ。続けて」
「…はい」
有無を言わさずに先を促した綱吉に、獄寺は話を再開させる。
それを半分くらいは聞き流しながら、綱吉は目の前の獄寺を見た。
少しだけ細った頬、憂いを帯びた表情、何も着けていない―細い、指。
見ているだけで罪悪感を覚える様な、銀色の睫毛の羽ばたきに、綱吉は小さく息をついた。
「獄寺くん」
「はい」

「君は、僕の大事な人だという事を忘れないでね」

干乾びるにしろ、溺れるにしろ、それは君が決めた事だけれども。
でも此処には照りつける太陽の日差しや激しく降る雨を凌ぐ屋根がある事を忘れないで。

いつだって、自分は蚊帳の外だからこそ、

2009/02/03 皆川(加筆修正済/蚊帳の外だからこそ見える事もあります)