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WORDS

A delusion sentence.

Log: 04/Mar 「beloved at the best」


前半終了の笛が鳴る。
伸ばした手で弾いたバスケットボールが、一回バウンドして床を転がった。
こめかみを伝う汗の粒が、体育館の汚い床にぽたり、と落ちる。

20分。たった20分の間だが、全力で戦った。
たかが学校の球技大会だったが、どうしても勝ちたかった。
「(…さすがに手強いな)」
試合は決勝戦。相手は3年。苦戦になるのは想像に容易い事で、自身のクラスメイトが待つ体育館脇に帰ってからも、山本は俯いたままだった。
眼をきつく閉じ、深く息を吐く。
現在のスコアは28-16。前半の20分でこの調子じゃ、後半の20分が思いやられる。
諦めは悪い方だが、それが必ず報われるとは限らないのだ。

「もうへばりやがったのか」
ふいに聞こえた声に、山本は眼を開けた。
いつも遊ばせている銀の髪を後ろで一つに纏め、腕にはリストバンド。
学校指定のTシャツの上には自分と同じ色のナンバリング―no.9
「獄寺も、出るの?」
練習など一回もしていない―綱吉が参加していたので参加はしていたが―獄寺は手首を軽くストレッチすると足元のボールを拾い上げ、山本の胸倉を掴み引き寄せた。
「お前には最高のパスをくれてやる。落とすんじゃねーぞ」
そう言われて、山本は綻ぶ様に笑った。
「お前からのパスなんて、落とす訳ないだろ」


「俺がいて、負けるなんて有り得ねぇからな」

2008/06/22 皆川(修正したけど何かアレです)