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WORDS

A delusion sentence.

Log: 14/Oct 「eclips」


「月が綺麗だな、獄寺」

アイスクリームが食べたい、と彼の我侭でコンビニへと行った帰り。空を見上げて、何気なく呟いた言葉に隣にあった気配がすっと離れた。不思議に思って振り返ると、そこにはびっくりした顔をした彼が、いた。
「何?どうした?」
「ど、どうしたじゃねーよ。何だよいきなり」
驚いた顔のまましどろもどろと話す獄寺の顔は、少しだけ赤く見えた気がした。訳が解らずただ黙ると、獄寺は視線を逸らせて何事かと呟く。言葉の端々に馬鹿とか何とかが聞こえたのは聞かなかった事にした。
「…獄寺ーアイス溶けるー」
立ち止まったまま歩みを進める気配の無い獄寺に、持っていたコンビニの袋を掲げて促す。本日は獄寺の家へとお泊りの日だった。二人で月を眺めながら夜道を歩くだなんてとても風流だけれども、色々持て余す年頃の自分は、早くもっと違う事がしたいのだ。
「ごく」
「うるせーな」
ツカツカと歩いてきた獄寺は、デニムを履いたその足で山本を軽く蹴った。威力も無く、倒れる事はなかったが、何が何だかわからず頭の上にはてなマークを飛ばした山本を、獄寺は睨みつける。その顔はやはり微かに赤かった。

「俺も、月が綺麗だって思ってるっつーのバーカ!!」
「…はぁ!?」

2009/04/19 皆川(修正無し/「月が綺麗ですね」は夏目漱石流「I love you」の和訳だそうな)