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WORDS

A delusion sentence.

蠱惑(土斎企画2 お題「偶にはアンタが下になってみればいい」)


「お前はいい男だと思うんだよ」
「…嫌味ですか」
「お前なぁ…人が折角褒めてんのに」
「副長が言うと、嫌味にしか聞こえません」
「…俺はよく色男って言われるだろ。でも色男ってちょっと意味が悪い気がするんだよな。まぁ、例え悪い意味でも強ち間違ってもいねえんだがよ」
「はぁ」
「お前は度胸もあるし、冷静で意外と頭も切れる。剣の腕は一級品だし、顔も悪くねえ。性格に面白味がねえのは…まぁ真面目って言えば問題ないしな」
「…」
「博打でも女でも現を抜かす様な事は無いし、酒は…まぁいいか。一つくらい引っかかりがあるくらいが丁度いい」
「…それで褒めてるつもりですか」
「もしも、俺が女だったらお前みたいな奴の所に嫁ぎてえよ」
「…はい?」
「逆に俺みたいなのは絶対に嫌だな。無理だ」
「…暑さでとうとうおかしくなりましたか」
「色男って言うのは男としてはいいのかもしれねえが、人としては駄目だ。いい男って言うのは男としても、人としてもいいんだよ」
「…」
「風呂に入りながら、考えた話だがな」
「…何、考えてるんですか…」


「で…まだ、猪口置かねえのか」
呆れた様な声音でそう言われて、斎藤は口元へと運んだ猪口を止めた。
「…え?」
「俺はさっきから、猪口を置いて待ってるんだがな」
疑問に思い、土方を伺い見た斎藤は、自分を見やる土方の瞳とかち合う。一目瞭然だった。何をですか、と問うまでも無いその意味は、紫電の瞳が生々しく物語っている。盆に置かれた土方の猪口には、当たり前ながら何も入ってはいない。
「それこそ俺に対する嫌味か、って話だ」
下戸である土方が、酒豪である斎藤に付き合って飲めばどうなるかなんて想像に容易い。それほど経たない内に正体不明になるのは目に見えている。そんな日もたまにあってもいいだろうと土方は心密かに思っていた。だが、今日は違うのだ。ここで正体不明になってはいけない。今日の土方は、この先にあるものへと期待を寄せているからだ。土方に今、急ぎの仕事は無い。斎藤も明日は休みになっているのは確認済。ここ稀に見る好条件なのだ。
「…そういう事でしたか」
夜、土方の部屋で酒を飲む。その誘いを受けた時に薄々思ってはいたが、やはりそっちが本題なのかと斎藤は思う。だが決してそれを不快に思ったりはしない。斎藤も想い人である土方と身体を重ねる事は嫌ではないからだ。もう少しこの上質な酒を味わいたかったが、絆されるのもいいかと思う。何より自分を見る土方の視線が熱を帯び過ぎていて、ここで焦らしては後で何をされるかわからないと思った。
「…そういう事ならそう言って下さらないと」
しかし、身体を重ねる事は嫌ではないが、求められるがまま素直に身体を開くのは何となく癪に障る。斎藤は猪口に注いでいた酒を一気に煽った。
「明け透けに言うのは興が削がれるんでな」
大して変わらないだろうと斎藤が一睨みしても、土方の表情は変わらない。それどころか首巻を取られ、肩に掛かる結い髪を払われる。つつつ、と着物の袷に沿って降りる手に、無防備になった首へとかかる土方の吐息が斎藤の喉を震わせた。
「い、きなりですか…」
「意思は示しただろ」


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2010/07/28 皆川(新選組を色々と間違えている…って言うかぐだぐだ過ぎるww)