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WORDS

A delusion sentence.

L.Happiness(8059)


『…獄寺?今、時間ある?』

テレビをつけ、ぼんやりとその画面を眺める。そんな折、獄寺は突如鳴り響いた着信音に携帯をパカリと開いた。そこには”非通知設定”の文字。思わず眉を寄せたが、応答ボタンを押下し耳に当てた。すると、耳元で聞こえてきた声は先程まで一緒にいた人物で、獄寺は眼を瞬く。
『獄寺ぁ?』
「…何だよバカ本」
山本の自宅は電話が古く、番号通知の申請とやらも山本の父親が面倒臭がってしていないらしい。だから山本から電話が来る時はいつも”非通知設定”なのだ。
『ちょっと出て来れね?』
「今、何時かわかってんのか?」
時間は既に23時を優に回り、24時近かった。夜道が危ないとか門限がどうとかではなく、この時間に出て来いと言うのは些か自分勝手だと獄寺は思った。大体、先程―と言っても5時間以上前ではあるが―まで綱吉の家で一緒だったのだ。今更出て来いとは何事なのだろう。獄寺は軽い溜息交じりで燻っていた煙草を捻り消した。
「…メンドクセー」
『そう言わずに。な?』
「用件あるなら、今言えよ」
そうも言いながら、ジーンズの後ろポケットに財布を入れ、足は玄関へと向かう。口では嫌がる素振りを見せているが、獄寺の口角は僅かに上がっていた。きっと単純なアイツの事だ。何が言いたいのか、何がしたいのかは明白だった。それでも乗ってやろうと獄寺が思ったのは、今日の気分が良いからだ。夕方から綱吉の家で誕生日パーティーなるものを開催して貰って、みんなにおめでとうと祝って貰って。一人で誕生日を迎える事も少なくなかった獄寺にとって、それは物凄く嬉しかった事だった。思い出すだけでも口元が緩むそれを思っていると、テレビの電源を消すのを忘れて部屋へと引き返す。
『…電話じゃちょっと…』
その声の変化にリモコンのボタンを押す手がビクリ、と跳ねる。いつもと違う声音。少しだけ低くなった声は妙な真剣さ、深刻さを感じてしまう。獄寺はリモコンのボタンを押し、テレビを消すと再び玄関へと向かう。タイミング的にはもうアレしかないと踏んでいた獄寺だったが、もしかしたら何か違う用事なのかもしれないとふと思った。こんな夜更けにわざわざ出て来いと言うのは何か―
「…何か、あったのか?」
『…』
聞いても返事は帰って来なかった。自分の誕生日が楽しかったからとは言え、少し浅はかだったかもしれない。何でもかんでも自分の誕生日に繋げるなんて、自分こそ勝手だ、と獄寺は思った。その時にタイミング良く、家のチャイムが鳴って、舌打ちする。
「ちょっと待ってろ。誰か来た」


2→

2008/09/12 皆川(…すんません続きます…)